黄金町アートブックバザール は、現在準備中です。

2022/08/12 15:06

こんにちは!
黄金町アートブックバザールの安部です。
本日は「黄金町夜曲」をご紹介します。

山田秀樹氏の写真とスケッチ、MZ artsの仲原正治氏の文章と写真などによって構成された一冊、
横浜・黄金町の変遷がわかりやすくまとめられています。

子どもが絶対に立ち入ってはいけないと言われていた、横浜・黄金町地区。
いったいなぜ、この街は売買春の横行する街となっていったのか、そしてアートの街へと変貌したのか、
江戸時代初期に行われた埋立事業、米軍による接収、1995年の阪神淡路大震災による影響、
この土地に起きたことを時系列にまとめています。

2006年3月「初黄・日ノ出町まちづくり宣言」(初音町、黄金町、日ノ出町地区は「初黄日」と呼ばれています)では、
①まちの個性「地域資源と人材ネットワークを活かし、チャレンジできるまち」
②にぎわい「アーティストやマイスターが集い、横浜を訪れる人々が回遊してくるまち」
③水とみどり「大岡川や野毛山の花やみどりや水を楽しめるまち」
④コミュニティ「多様な世代が住み、子どももおとなも、日本人も外国人もみんなが顔みしりのまち」
⑤安心安全「犯罪や売買春のない、安心して暮らせるまち」
これら5つのビジョンが立てられました。

それから16年が経過し、2022年8月現在、黄金町で生活し、黄金町AIR(黄金町アーティストインレジデンス)でも活動する身として
個人的に感じている雑感を最後に記そうと思います。

①「まちの個性」
2019年に初めて横浜で暮らすこととなり、まず江戸時代に行われた埋立事業による街の形成、大岡川、横浜大空襲の被害を今に伝える寺院や墓地、戦争の痕跡、そして特殊飲食店が営まれた独特の形をした建物、高架下……外部からやってきた者としてまず個性を感じたのは目に見えるものとしてはそんなところだった。生活し始めて4年目を迎え、この狭い地区の中にも、当たり前だけど色々な人がいて、考え方も生活スタイルも違う、どの街でも同じことだが、この街におけるその差異には繊細な部分が含まれるように感じることもある。

②2020年、コロナ以降黄金町のアーティストたちもなかなか集まってワイワイ騒いだりはしにくくなったものの、2022年現在は海外からのアーティストの受け入れも再開し、にぎわいを感じている。高架下には、ここ「黄金町アートブックバザール」の他、宿泊もできる「tinys Yokohama Hinodecho」さん、美味しいコーヒーが飲める「chair」さん、「日ノ出町フードホール」などが並んでいて、週末には「水辺荘」「横浜SUP倶楽部」で大岡川のレジャーを楽しむ人たちでも賑わっている。

③この時期は、大岡川の水面が夏の光を照り返して、桜の葉に光が揺らめいている様子に癒される。春は満開の桜、プランクトンが大量に発生して赤くなったり緑になったり、クラゲが大量発生したり、ボラがスイスイと泳いでいたり、その日その日で表情を変える大岡川。そしてみんな大好き「野毛山動物園」は、初黄日地区から徒歩15分くらい。野毛山公園の広い芝生の上でのんびり、近隣には図書館もあり、小さなお子さん連れのご家族も暮らしやすそうな印象。

④この地区はたくさんの外国籍の人も暮らし、働いていて、道ゆく人が韓国語を話していたり中国語を話していたりベトナム語を話していたりするのをよく耳にする。アーティストもたくさん海外から来るので、全く英語が話せなかった私も、少しはコミュニケーションを取れるくらいになった(?)かいだん広場では毎日子どもたちが遊び回り、周りにレジデンス施設が立ち並んで、大人の目があることもあってか、安心して遊べる場所となっているように思う。

⑤大岡川から向こう、初黄日地区ではないけれどものすごく近い、同じエリアといってもいいほどに近いその周辺にはソープランドやラブホテルが立ち並び、夜になると立ちんぼのお姉さん、客引きのお兄さんが出没する。私自身はセックスワーカーの人たちを非難する気持ちは一切ないのだけれど、アートの街となったこちら側から見つめる川の向こうの光景と、川の向こうから見つめるこちらの光景がチグハグに感じることはある。



「黄金町夜曲」は黄金町のこれまでを知るために、必読の一冊です。
ぜひお手にとっていただき、現在の黄金町の街を訪れてみてください!

記事作成:安部寿紗